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VOL.007
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★ 今回こちらに掲載しますのは、2009年1月25日に発売しました福岡の雑誌「f Sketch」に掲載されたhippinessの特集ページの内容になります。 |
| 「hippiness」は、なぜすごいのか |
| 単純に「斬新な服」とひとまとめにすることができない洋服がある。 長めに採られた生地による計算されたドレープ、わざわざ目に見えない部分にまでこだわられたパーツの数々・・・ そんな一つひとつの要素が相まることで初めて完成する「hippiness」は、いつも私たちに新しい「かわいい」を届けてくれる。 これからの4ページは、今年で12年目のシーズンを迎える福岡のレディスウエアブランド「hippiness」の軌跡と今のストーリー。 |
| Photograph>Takumi Tsunematsu(Takumi Photo Studio) Hair>Shingo Fukumoto(Tiny) Make>Yuki Noda(Happiness) Writer>Kenichi Seguchi(f Sketch) |
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| オールインワン(BLK) 98,000円(club volcano)、ボウタイブラウス(PNK) 22,000円(hippiness) ブレス(BLK) 7,875円(saranam)、ベルト(BLK) 14,700円(saranam)、ブレス(ヒョウ/CHO) 3,675円(saranam) ブレス(PNK) 4,200円(saranam)、アンティークビーズネックレス・ブレス(RAINBOW) 参考商品 |
| セレクトショップから オリジナル発信へ 初めての出会いは今から4年前。地元アパレルメーカーの特集で、このブランドに迫ったのがきっかけだった。 当時、このブランドは、既存にない物を「自分たちの手によって」というスタイルをそのままに、それまであった「トラノイ」 「ローラーズハイ!!」を休止し「hippiness」として一本化するという、大転換期を迎えていた。 「90年代中盤から後半というのはセレクトショップの全盛期と同時に百貨店改革が一斉に始まった時期。自分たちも 含めてそれまで展開していたインポートアイテムのほとんどは百貨店改革の波によってさらわれようとしていた。 それ以降、たとえ良いものを扱ってそのブランドを市場に根付かせたとしても、最終的には全部百貨店にもっていかれて はもう終わり。一番世話のかかる時期の子どもを受持つ幼稚園の先生のような錯覚を当時覚えた。」 とは本章の主人公であり若干25歳という若さで「hippiness」の主宰となったコヤナギシンジ氏の言葉だ。彼との出会いも また4年前だった。 洋服作りを開始して12年目に突入する「hippiness」。今では「hippiness」を柱に「hippi choice」、「club volcano」などの プライベートブランドを多く抱える一方、一昨年からは同じデザインチームが手掛ける「RehersalL」が、福岡はもとより 東京にも根強いファンを獲得するなど確かな実績を築き上げてきた。「12年」、口では容易く言える数字でも、今の価値 感において、あるひとつの事を長年継続していくことは並大抵のことではない。特に移り変わりの早いアパレルという業種 においてはなおさらだ。なぜ、「hippiness」はこの福岡で凛と生き続けることができるのだろうか。答えは前述したビジネス 成果が支えているから?恐らく間違いではないだろう。でも彼はそれを答えとしない。どうやら別の理由がありそうだ。 自分の一生を捧げる デザイナーへの敬意 オリジナルブランド「hippiness」の洋服には、当然ながら作り手がいる。代表としてMD的役割やデザインディレクション をこなし、全体の指揮を執るコヤナギ氏を軸に、彼が「自分の右腕」と話すデザイナー、榊原氏の存在がこのブランドに とって何よりも大きい存在となっている。そんな榊原氏は現在独立し、自身のレザーブランド「saranam」も手掛けながら、 「hippiness」に関わっている。「19歳でのあいつとの出会いは大きかった。福岡を離れ当時ロンドン在住だったサカキを どうしても福岡に呼んで一緒に服を作りたかった。だからこっちもあいつが仕事をできる環境を作ってあげたかったね。 その思いを伝えにロンドンまで足を運んだくらい。多分この二人の関係性だけは昔も今も世界一だと思う。カールラガー フェルト、マークジェイコブス・・・世界には多くの名だたるトップデザイナーがいるかもしれない、だけど彼らには彼らの 作った洋服をある人が自分の一生をかけて売ってくれる営業や販売がいるかといったらそうじゃない。一生ですからね。 でも僕の場合、榊原というデザイナーが創ったものは一生をかけて売っていこうと思っている。どんな有名デザイナーで すら、この部分には憧れを抱くのではないでしょうか。」今でも最も信頼おくビジネスパートナーとして、洋服造りに挑む 二人。時に榊原氏との過去を懐かしそうに語る表情から、物づくりにおける土台の大切さがいかに重要であるかを痛感 した。それにしても、ビジネスパートナーに一生を捧げる覚悟など生半可にできることではない。 |
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| ダブルロージャケット(L/GRY) 47,000円(hippiness)、N/Sネクタイシャツワンピース(SIL)
27,000円(hippiness) リネンシルクジャケットカーディガン(BEG) 21,000円(hippiness)、リネンシルクイージーパンツ 28,000円(hippiness) ブレス(BLK,CHO) 4,515円(saranam)、フリルストール 18,000円(RehersalL) |
| 芥川龍之介と菊池寛 洋服のデザイナーとして、将来的に自己のクリエーションを多くの人に知ってもらうこと。それは多くのデザイナーの夢 であり、福岡でこれだけの実績を残すこのブランドだけに、彼にも当然東京という場所への意識や野望を持っているもの と予想していたが、答えは意外なものだった。 「今はない。でも若い時ってちょっと一発どうこうという衝動は誰にだってある、俺はすごいんだって、自分を信じてやる !みたいな。例えば自分の場合、22歳からショップを始めてきて初めは22の若造に何ができる?って誰も取引なんか してくれなかったし、野望というかいつか見返してやりたいという気持ちがあった。今分析すれば、ある程度何年かやって きてその店のセレクトが認められてきた時期があったけど、そうなってきたらダメ。相手も手の平を返したように、すごい ねって言ってくる。当時は単純だからそれでいい気分になるじゃない。天狗になるってことです。大体人間はそうなってし まう。でも成功するかどうかはわからないけどきちんと人間成長していくことが大事だと。仕事としてお金という部分や、 僕らで言えばデザインという部分であっても何を持って成功とするかって、絶対わからない。 ”芸術第一”を掲げた芥川龍之介と”大衆第一”を掲げた菊池寛のどっちが成功したのかって、大衆に受け入れられた 菊池寛の方がビジネスとしては成功しているのかもしれないし、でも何となく芥川龍之介の方が偉大な文筆家として思わ れることもあるし。でも菊池寛も日本を代表する作家なわけで・・・。その”大衆”と”芸術”の比重という部分は無視できな いと思う。自分の感覚がどれだけ通じるか、という第一芸術。結局芥川さんが自ら命を絶たなくてはいけなかったように、 僕らもこれまで仕事で何か失敗したり転んだりしてきた中で、何で転ぶのか、何でこんな失敗をするのか、どうしてこんな にきついんだろうと思っていた時に、結局作り手の本位だけで服は提供できない、芸術第一主義ではだめということに気 づいたというか。周りの人のこととか、生活のこと、洋服に関わる人たちのことを考え出すようになってから、質が違う失敗 の仕方ができるようになった。本当に人が喜んでくれることは何なのか、人を楽しくさせるものとは何か、こっちがボール を投げることに反応があることってすごく楽しい。だから自分のために生きていくほどくだらないことはなくて、自分にしか 取れない”芸術”という豪速球を投げたり、ぶつけて痛いと感じられるよりも、はい投げるよ!と声をかけて皆が取れるスロ ーボールを投げたいと思う。そうしながらどれだけたくさんの人間と交われるかということを考える方が今は幸せ。」 着る人の喜びを第一に考えながらも、異素材の生地の組み合わせやシルエットなどによって普通の服に留まることなく きちんと「hippiness」らしい要素をデザインに反映しているところに、彼のデザイナーとしてのプロ意識の誇りが見え隠れ する。 何が売れるかではなく、 何を創りたいか 通常、コレクションを持つブランドは半期に一回シーズンテーマを設け服に変化を付けていくのがセオリー。でも「hippin ess」は、変化しない。と思う。創られるアイテムは当然変わっても、ものづくりのスタンスは何一つ変わらないことがすご いのだ。その軸の強さはどこから生まれてくるのだろうか。 「もっと売りたいとか売れたらいいとか、そんなことは誰でも考える。今の雑誌だってそうでしょ。今これが流行ってると か人気とか。実はうちも何回もやってきている。アイテムで例えるとカットソーなんかはカラー展開して手頃な金額で普通 に着れそうなものをやったことがある。でも、ものの見事に失敗してるんだよね(笑)。なぜかといったら、それが求められ てないから。だから極端な話、インナーはユニクロで良いということよね。その店にはその店にしかない良さがあるという ことじゃないかな。逆に言えば、お客さんがそれをチョイスする時代だし、そこは昔とは明らかに違う部分だろうね。」だと すれば、「hippiness」に求められるものとは一体何だろう。彼によるとそれは”わかりやすいかわいさ”というものらしい。 「僕も含めデザイナーが男性だからね。ある人が言っていたよ。男性のデザイナーが創るレディスは、”コスチューム” 、デザイナーが女性であれば理にかなった洋服が出来上がるって。確かに女性デザイナーだと、機能性のあるジャージ 素材などを良く使うけど、僕たちは使えない。だからいつの間にか、最後は見るからにわかりやすく、色、柄、形をかわい くした服の方が情緒的かなと思ってしまう。機能的というのはどちらかというと情緒的ではない。でも本当は女の人の服 は女の人によって作られたほうがいい。ただ男がつくるからこそおもしろい部分があるし、男の服にはないバリエーション が多いからこそ単純に楽しかったりもする。要は男として客観的な見方ができるし、お客さんに着てみて!かわいいから !!ってある意味潔く媚びることができる。逆にメンズの服をつくったら絶対に媚びない自信があるというか、完全に独り よがりなものが出来上がっていくと思う。そんな要素が僕たちにはあるからね(苦笑)」。そう話す理由に、男性はもともと 服では計れない生き物という部分を挙げた。 「メンズショップで販売をやっていた時に、気づいたことがある。男の子は決まって洋服の表現に”かっこいい”という言 葉を使うんですね。その時から思っていることが、かっこ良いとか悪いとかで服は存在しないということ。それはその男の 中身の問題であって、いくらかっこいい服があったとしてもそれを着たからってかっこ良くなれるかってそうじゃないでしょ 。服は作った人の子どもみたいなものだから、子どもに対してうちの子カッコ良くない?というのはちょっとおかしな表現 使いで、うちの子かわいいんだよね、が本来の言い方。だからメンズであろうがレディスであろうがきちんとプロダクトとし てデザイナーの心が入っているものはすべて、”かわいい”んですよ。服はかわいい。そしてかわいいものを見つけきる センスとか感性があって、それを拾い上げて着て初めて人が見た時にかっこいい人はかっこ良いだろうし、その服を着た からといってかっこわるい人はかっこ悪いんだと思います。結局何を言いたいかというと男は服に頼れないということです 。でも女の子は逆。服とかお化粧とかに頼れるのは女の人の特権だと思う。男がそこに頼ったら絶対終わりだと思います 。レンタルの高級車に乗りまわしてもみっともないということに似ている。」 そう話しながらも、彼のプライベートブランドの中には「club volcano」というメンズラインがあるのには興味深い。そんな 男としての美学を持つ以上、このアイテムには必要以上のこだわりが反映されている。このメンズ服はある意味、彼の趣 味的洋服なわけだ。目に映らないパーツから縫製にいたるまで、この服にはかなりの手間とお金が使われているらしい。 「経営者としてはやらない方がいいものなのかもしれない。だけど着たいものは着たいからボジョレーヌーボーのごとく 、一年に一回の楽しみとしてサカキと創ってます(笑)」 |
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| シルクシフォンロングワンピース(BEG) 34,000円(hippiness)、ストール 38,000円(hippiness)、 フリルストール(BEG) 18,000円(RehersalL)、ブレス(BLK) 4,515円(saranam)、 アンティークビーズネックレス(RAINBOW) 参考商品 |
| 福岡のスタイルは 昔から「ウエルカム」 福岡のストリートにおけるセレクトショップの影響力は年々低下傾向にある。巨大資本の進出によるアパレル市場の肥大化によって ”福岡というスタイル”は多からず失われつつあるように思う。かつてトラッドなインポートアイテムを身に纏った大人たちが作り上げた 「福岡カジュアル」と呼ばれた時代があったように、個人的には「hippiness」の洋服が、いろんな人の捉え方によって多くのシーンで 活躍するような街になれば面白いだろうなんて思ってしまうのだが、それはあまりに短絡的でこれだけ情報に溢れる時代にそんな発想 は通用しないのかもしれない。12年も続くブランドとして、「hippiness」は福岡の街をどう見てきたのだろう。 「旅に出るといつも思うことがある。それは福岡の人って人懐っこいし面倒見が良いというか、福岡を好きになってもらいたいと思って いる人が多いように思う。そういうウエルカムな気質こそ、新しいものを作ったとき、それを受け入れようとする気持ちにも通じていると思う。 それが似合うかどうかはわからないにしても着てみようとする。逆に意地悪な人はそれを「自分がない」と言うかもしれないけど、 それは福岡が誇る気質だと思いたい。福岡の人があるものを自分の中に取り入れようとする意識は感性が強いことだと思う。僕の中で 人間のバランスの基準には”美学”、”感性”、”理論”があると考えていて、この3つで物事をとらえてみると仕事とか人生とか何でも見えて くる。筋道を立ててものを考える数学的な要素を持つ”理論”。”美学”とは自分が失いたくないこだわりの部分。そして”美学”との境界線が あいまいに捉えられがちな”感性”。特に若い時にそうだったかもしれないですが、”感性”と”美学”の差ってみんな真剣に考えたことが ないっていうか、親などがよく感性を磨きなさいって言うけど、若い時はそれを勘違いして、自分の感性には違うとか”美学”と物凄く近い 距離で捉えてしまう時期ってあると思うんです。でも”感性”というのは結局自分でないこと、人からの意見をどれだけ聞くかということが 感性。何かを発することが感性ではない。自分の感性をわかってくれないというのは自分の美学をわかってくれないと嘆くことと同じ。 美学を押しつけてしまうことは自分にとってすごくアンラッキーなことだと思う。でも、”感性はある”というのは大切だと思う。なぜならそれは 人の話を聞くということにつながるから。”感性がない”というのはそれを聞かないこと。決して芸術的才能が乏しいという意味ではない。 だからこの街はいろんなものを率先して取り入れることができるということです。自分たちが創造した服にノッてくれる環境があるということ ですね。」 |
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| シルクシフォンロングワンピース(ペイズリー・BEG) 38,000円(hippiness)、ルードバッグ(BRN/KHA)
73,500円(saranam) OHANA HAT 参考商品(hippiness) |
| ヒッピネスはどこへ向かう 後ろを向いた女の子の写真は、見る者に何を訴えかけるのだろうか。創り手側からこのブランドへの愛おしさを訴えかけているのか? それとも新しいことに対する先を見つめているのか?答えはきっと誰にもわからない・・・。わからない方がこの服らしい。 「最近のレディスに思想や哲学を感じない服が増えていくのは残念なこと。やっぱりね、洋服にはユーモアと哲学、そして愛と情熱が なければいけないと思うし、何事もそうできていると感じます。だから「hippiness」の服では哲学や思想を入れ込むのが僕の仕事で、 それを形にするのがデザイナーの榊原、またそれを今回モデルとして体現してくれたヒッピちゃん(現場のスタッフ)たちがたくさんの人に 伝える役目を担っている。」 作り手の情熱に答えるお客さんがいること。これは洋服を通してたくさんの人間関係が生まれていくということ。ごく当たり前のようで この時代にこそ難しい感覚を自然に持てる理由とは、この人と人とをつなぐ服を作っている人間が、誰よりも人間臭いからだ。 |